リスクコミュニケーションとは、不安を取り除くために安心を押し付けることではなく、不安の原因を取り除くために具体的な策を講じることです。
この状況下において、大切な子どもたちをどのように守っていったらいいのかと、多くの負担強いられてしまった子育て世代の母親たちは、子どもたちを追加被曝から守るため、具体的な行動を起こしました。
『TEAM ママベク 子どもの環境守り隊』
http://iwakinomama.jugem.jp/?cid=17
一通りのモニタリングと除染が行われたと言われる子どもたちの環境は本当に安全なのか、事故前と比較して、増えたリスクはどの程度なのかを確かめるため、空間線量や土壌の汚染を測定したところ、楽観視はできない実態を知ることとなりました。
この測定活動はいわき市教育委員会と除染課、子育て支援課、いわき市民放射能測定室「たらちね」の協力のもと行っており、測定の結果については教育現場と行政ともデータを共有し、たらちねのホームページにもアップしています。
http://www.iwakisokuteishitu.com/mamabeku.html
いわき市内の小学校、中学校、保育所、幼稚園と、教育現場の測定を一通り終え、今現在は結果の報告のための作業を行っています。尚、今後の活動につきましては、決まり次第お知らせをさせて頂きます。
原発事故は今なお収束の目途も立たない状態であり、大量の放射性物質が放出され続けているという実態がありながら被害を受けている市民がその実態を知ることが困難になっており、楽観視することを促す情報に囲まれてしまっていることは、とても不思議なことです。
新たなホットスポットが見つかることは当然のことであり、モニタリングも除染も、これからも定期的に継続していく必要があるということは、目に見えるデータが示しています。
現実に向き合うことを否定するような安心の押し付けではなく、現実的な安心を目指すことが「子どもの未来のため」という辺りに溢れた空虚な言葉を実態のあるものとしていくのだと思います。
子どもの未来を預かる大切なポジションにいながら日々の暮らしに追われ、なかなか情報にアクセスすることができないという子育て中の母親は多数存在しています。
不安に思いながらも、その思いを口に出して言うことは難しく、誰がなにを思っているのか分からないという世界がここに存在しています。それは、様々な立場を思いやればこそのものでもあり、分断を恐れるゆえのものでもあります。
時間の経過と共に問題はますます複雑化しており、多くの矛盾を抱えながら、吐き出す場所がない息苦しさが、私たちを覆っています。
支え合うコミュニティづくりを目指すため、楽しいカフェを開催しながら『ママベク』の測定結果や行政の対応についてなどの報告も行っている『ママcafeかもみーる』は、実態を伝えながらリスクを回避するための策を講じる場ともなっています。
http://ameblo.jp/chamomile311/entry-12012487337.html
参加者たちからは、『ここに来てやっと本音を話すことができた』という声が多く寄せられるのですが、家庭の中にも存在する原発事故に対する捉え方の違いについての苦しさが、時間が足りないほどの勢いで解放される場ともなっています。
測定の結果を伝えると共に、その結果を受けての行政の対応を伝えることにより、『どうせどうにもならない』という諦めは改められ、『市民が動くことにより改善できることもある』という希望を抱くことにも繋がります。
カフェで上がった意見や質問は、行政との協議の際にお伝えさせて頂いておりますので、その声が生かされる可能性もあります。
このような経験は誰もが初めてのことです。具体的にどのようにしていきたいのかというビジョンを、ひとりひとりが持つことにより、その思いが重なり、未来へつながる足跡を残していけるのだと思います。
責任ある大人としての生き方が問われる今、出来る限りのことをしながら、やさしい未来の実現を目指していけることを願います。