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放射能リテラシー・ワークショップ vol.1のご報告2015.02.11 Wednesday
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簡単にではありますが「放射能リテラシー・ワークショップ 」vol.1のご報告をさせて頂きます。
『3.11後の放射能「安全」報道を読み解く 社会情報リテラシー実践講座』の著者で、東京大学大学院教育学研究科教授の影浦峡さんによるリテラシー・ワークショップは、会場が凍り付く寸劇からスタートしました。
...KさんがいきなりIさんに水をかける。
Iさん「ちょっ、ちょっと!なにすんですか!やめてくださいよ!!」
Kさん「いや、これはミネラルウオーターだし、安全だし、シャワーだっていつも浴びているでしょ?」
Iさん「なにふざけたこと言ってるんですか!謝ってくださいよ!」
〜このコワいやり取りが何度か続く。〜
Mさん「そんな、いいじゃないですか〜。風邪をひいたわけじゃないんだし」仕込みなんだろうな〜とは思いつつ・・あまりの熱演ぶりが、あんまりリアルでちょっと怖かった・・・。
第一部では、影浦さんのワークショップとして、3・11以降の専門家などの言葉を引用しながらグループで話し合って、おかしな部分がどこなのかを指摘し、論理的な観点から言葉にするということを行いましたが、これがなかなか大変で、これまでいかにそういった目線が欠けていたのかということを気づかされました。
3・11以降、いろんなことはすり替えられながら、あまりにも理不尽でおかしなことが平気で進められてきました。
主体が誰で、カテゴリーはなにで、といった言葉のやりとりを丁寧に紐解いていくことで、内容についての専門的な知識がなくても、たいていのことは自分が主導権を握りながらおかしさを指摘することができるということに、参加者一同、大きな刺激を受けました。第二部では、これまでの給食問題の経緯や、教育長や福島県に提出した質問書への回答などを振り返りながら、第一部で学んだ目線をここに当てはめました。
ワークショップの内容の一部を、平成26年12月15日に「子どもたちの安心・安全を考えるいわきママの会」が、いわき市教育長に提出した給食問題についての質問書とその回答を例にしながらレポートさせて頂きます。
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「原発事故に伴う子どもへの健康影響についての質問書」
原発事故という重大な事態に際し、子どもたちが受ける健康影響についての教育長のお考えをお聞かせください。
A. 健康影響について
1. 放射線の健康影響には閾値があると思いますか。
2. 閾値無直線モデル (Liner Non Threshold:LNT) を支持しますか。
3. 子どもの方が大人よりも放射線に対する感受性が高いと思いますか。
4. 放射線の影響よりも心配し過ぎる方が健康に悪いと思いますか。
B. 学校・給食について
1. 自らの方針あるいは不作為によって児童の健康リスクが増加する恐れがある場合、
それをどこまで許容しますか。発がん・がん死の許容割合でお答え下さい。
(1000人に1人、10000人に1人など)。
2. 国が販売、採取、製造、輸入、加工、使用、調理、貯蔵、陳列を禁止する規格基準
である100 Bq/kgを学校給食に適用することは妥当だと思いますか。
妥当であると考えられる場合、その理由について答えください。また妥当ではな
いと考えられる場合、その理由についてお答えください。
3. 学校という場では、児童の安全をいっそう重視すべきだと思いますか。
C. 法律・行政方針について
1. 国際的に汚染物質の基準値作成の基本となっている、ALARA原則 (As Low As
Readily Achievable:合理的達成可能な限り低く) についてどう思いますか。
2. 予防原則についてどう思いますか。
3. 子どもの権利条約についてどう思いますか。
D. 状況認識の手続きについて
1. お弁当持参の申請が300人程度であったことから、不安に思っている家庭が少な
いと判断できると思いますか。
E. その他
1. 食育とはどのようなものでしょうか。
2. 「風評被害」とは何ですか。ご理解されているところをお答えください。
*****
上記の質問書より
「E. その他 1. 食育とはどのようなものでしょうか。」という質問に対するいわき市教育長の回答。
「法律にも定められていて、食育基本法を進めないといけない。それはバランスよく育てるためのベースになることで、これまでいわき市は全国に先駆けて取り組んできたし、生産者や流通業者にお世話になって来たので、その方たちへの感謝や郷土への理解を深めるためにも、検査体制を整えてこの地で採れた食べ物を食べることができるようになることで、子どもたちは誇りを持てるようになっていく。事故によってそれがゼロになってしまうことは本当に悔しいことで、取り戻すために自分は必死で取り組んできた。
水俣の子どもたちも長い年月をかけて誤解による人権侵害を受けて来たけれど、正しい知識を身に着けることでそれは払しょくしていける。つまりそれが放射線教育だ。この土地でできたものを食べることができないことや、この土地で暮らしながら外で活動ができないということは、差別に繋がる。『いや!そんなことはない。地元のものを食べて、外で過ごすことができた』と言わせてやるためにも、検査体制を整えて除染をすることが大事で、心ない言葉や態度に接した時に言い返すことができるようになるためにも地元で育つ食べ物を食べることが大事」
〜ワークショップ 『給食問題について、いわき市教育長に宛てた質問書についての回答を紐解く』〜
「水俣の子どもたちも長い年月をかけて誤解による人権侵害を受けて来たけれど、正しい知識を身に着けることでそれは払しょくしていける。つまりそれが放射線教育だ。この土地でできたものを食べることができないことや、この土地で暮らしながら外で活動ができないということは、差別に繋がる。『いや!そんなことはない。地元のものを食べて、外で過ごすことができた』と言わせてやるためにも、検査体制を整えて除染をすることが大事で、心ない言葉や態度に接した時に言い返すことができるようになるためにも地元で育つ食べ物を食べることが大事」という回答について。
教育長は水俣の問題を例に上げているが、構図を紐解くと、水俣の子どもについては被害を受けて病気になった子と病気にならなかった子に分かれ、いわきの子どもたちについても、今後病気になる子、ならない子に分かれることになる。
教育長が指しているのは、水俣の、病気にならなかった子のことであり、差別と人権侵害についていえば、病気になった人たちが隔離されて差別を受けたという事実がある。
しかし、差別をしたのは周りの人であり、幸福に生きる権利を奪ったのはチッソである。そして、それを規制しなかった社会の問題である。
教育長の発言は、病気にかかった人のことに触れられていないことに矛盾がある。 つまり実態が隠ぺいがされているということ。
いわきの子どもが地元産のものを食べたけれどと言い返すことができるためには病気にならないことが前提である。
人権侵害は病気にならなかった子が受けたものであり、長い年月をかけて払しょくをしてきたというのはこのことを指す。
今後身体的な影響を被ること、事故によって苦しむということが抜け落ちている。
差別のことだけが問題ではなく、事故の事実や影響について言えば、チッソの垂れ流しに対応するのは今回の原発事故によってばらまかれた放射性物質であり、原因となる問題が無視されている。
しかし、検査体制を整え除染をする必要があるということは、ばらまかれたという事実を認めていることであり、つまり原因があるということではないか。
*****いかがでしょうか。見つめれば見つめるほどに、責任ある大人たちが言葉をすり替え責任逃れをしながら、子どもの人権を侵害している現実が浮き彫りになりました。
給食問題を含む放射能による被曝の問題は人権問題ではなく、不安を持つ住民の心の問題で、それは被害者を批判していることだということに、改めて気づかされました。
国が膨大な予算をつけて「不安に思う心こそが問題である」としながら、その払拭のために行われている【リスクコミュニケーション】は、こういった目線を奪うためのものだと感じます。
それはあらゆるところに浸透していて、子どもたちの教育の現場はもちろん、子育て中のお母さんを対象にしたゆるやかな会の中にも、しっかりと組み込まれています。
子どもたちの未来を預かる存在である母親たちが、こういった仕組みに気づくための目線を養うことが、とってもとっても大切なことなのに、なかなかそのチャンスがないことが、とっても残念です。
いまだから見えること、いまだからできることということは、流動的に変わっていくと思いますが、このワークショップの継続を求める声はかなり大きいため、シリーズ化していく予定です。
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スポンサーサイト2018.10.18 Thursday
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